エブセレ運営者/代表
VCとスタートアップのことに精通しており、
これまで学生から50代まで累計1000人以上のキャリア相談を
受けてきた20代女性起業家
実際にベンチャーで働きたい相談から、
そもそもベンチャーってどういうの?まで幅広くお話伺います。
「ベンチャー系のニュースを読んでいて初めて知ったけど、“ベンチャーキャピタル”って何?」
「ベンチャーキャピタルって最近よく聞くけど、日本にはどれくらいベンチャーキャピタルがいるの?」
「資金調達を考えているけど、ベンチャーキャピタルから投資を受けるってどうなの?メリットは?デメリットは?」
本記事は、ベンチャーキャピタルを知らない方・ベンチャーキャピタルという存在は知っているが詳しくは知らない方すべてに読んでもらいたい記事となっている。
これさえ読めば、
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ベンチャーキャピタルがどういう仕組みなのか
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ベンチャーキャピタルは誰のために何をしているのか
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ベンチャーキャピタルの立ち位置と特性
を理解できるように構成されている。
また、ベンチャーキャピタルの基本的な知識や周辺情報だけでなく国内190社のベンチャーキャピタル・リストも分類して記載している。
これから起業を考えている人、次のラウンドのための調達VC候補を探している起業家に今一度読んでほしい記事となっている。
また、ベンチャー企業に転職を考えている人にも、ベンチャー企業にとって重要なプレイヤーであるベンチャーキャピタルの基礎知識をつけてもらえる記事である。
目次
1.ベンチャーキャピタルの基本的な知識
ベンチャーキャピタルとは?
ベンチャーキャピタル(Venture Capital 略:VC)とは、ベンチャー企業の中でも、特に成長する見込みの高い未上場企業に対して投資を行う組織、投資ファンドのことを示す。
また、投資先企業の価値向上のために、経営のアドバイスや人材の紹介、事業提携の支援など行うこともある。
投資先企業に対して、資金以外のヒトやモノの支援することを「ハンズオン支援*」と呼ぶ。
*ベンチャー企業・起業家にとってベンチャーキャピタルのお金以外の支援は大きなメリットにつながる
最近の動向として、ハンズオン支援をするベンチャーキャピタルが増えた。
これまでは、起業家に対してベンチャーキャピタルの数が少数であったため、起業家がベンチャーキャピタルに見初められる必要があった。
しかし、最近は日本で数多くのベンチャーキャピタルや投資ファンドが設立され、起業家側がベンチャーキャピタルを選定する立場へと変化している。
そのため、ベンチャーキャピタルは他との差別化を図るため、投資以外の様々な支援を強調して起業家を惹きつける努力をしている。
ベンチャーキャピタルはベンチャー企業の成長エンジン?
ベンチャーキャピタルは成長見込みのある未上場企業に投資を行うことで、その企業の成長を資金面から後押しする機能を持つ。
発展途上である未上場企業は、資金面で苦しむことも多く、資金が不足しているがゆえに事業の成長スピードが遅くなってしまうことも多い。
そのため、ベンチャーキャピタルは未上場企業に投資を行い、事業の成長スピードを底上げするのである。
ベンチャーキャピタルの収益源は?
ベンチャーキャピタルは、企業への投資と引き換えに投資先企業の株式の一部を取得する。
そして、未上場企業が上場といったExit(エグジット)をすると、取得していた株式を売却し収益(=キャピタルゲイン)を得ることができる。
ベンチャーキャピタルはキャピタルゲイン(株式等の当初の投資額と公開後の売却額との差額=収益)で生きている。
そのため、投資したベンチャー企業が上場やM&Aできない場合は、ファンドで保有している企業の株式を発行会社や経営陣、第三者などに売却して資金を回収する事がある。
つまり、経営計画が立ちいかなくなると、資金回収を早めに行われる可能性という事だ。
だからといって、ベンチャーキャピタルがヤクザのように資金回収をしにくることはまずない。
そんな事をすると、ベンチャーキャピタル自身の評判が下がり、次の投資ができなくなってしまう。
もちろん、起業家・ベンチャー企業は、上場できなかった場合を頭に入れて自分の行いに責任を持つことを意識する必要はある。
だがしかし、一度失敗した起業家にベンチャーキャピタルは友好的であり、
決してヒドイ対応をすることはないから資金回収をデメリットと考える必要はない。
ベンチャーキャピタルは金の亡者?
ベンチャーキャピタルはキャピタルゲインで生きている部分もあるため、
「ベンチャーキャピタルは金の亡者」「ドライ…」な印象を持ってしまうかもしれない。だが、それは違う。
ベンチャーキャピタルも、起業家と同じように
「一緒に会社を大きくしよう」「上場を目指そう!」とベンチャー企業のことを第一に考えており、
決して金儲けのために投資を行っているわけではない。
しかし、一方でベンチャーキャピタル自身も、他の金融機関や投資事業会社から“投資してもらった”お金で未上場に対して“投資している”ので、収益をあげることを考えなければないのである。これらの仕組みは次に説明する。
2.ベンチャーキャピタルも、実は他から投資を受けている!
−ベンチャーキャピタルの仕組み 投資されて投資して−
ベンチャーキャピタルは、どのようにして未上場企業に投資をしているのか。
図を用いて、ベンチャー投資に関わる人物たちを紹介しながらプロセスを見ていこう。

その1:ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルは、それ単体では投資をするお金をまだ持っていない。
投資を行うために「ファンド」を組成する。(ファンドは、投資に必要なお金を集める“場”の役割を果たす。)
そして、ファンドを通じて、成長見込みのある未上場企業に投資を行う。
ベンチャーキャピタルの役割は、「組成したファンドを運用すること」・「未上場企業の成長支援をすること」である。
- 「組成したファンドを運用する」・・・運用、つまり預かったお金を最初の金額よりも増やすことで、出資者及びベンチャーキャピタル自らの収益をあげる。
- 「未上場企業の成長支援をする」・・・未上場企業が上場やM&AなどのExit(エグジット)を果たすことが運用成功の鍵であるため、ベンチャーキャピタルは未上場企業の成長支援を行う。
その2:出資者
ベンチャーキャピタルはファンドを組成して、資金を集める。
そこで、事業会社や金融機関といった「出資者」が必要になる。「出資者」から集めたお金を元手に、ベンチャーキャピタルは投資を行うのである。
つまり、ベンチャーキャピタルも未上場企業と同じように、他者からお金を投資してもらっているのである。
ベンチャーキャピタルがファンドを運用し収益を上げることで、出資者たちの手元にも最初にファンドに預けた以上の資金が戻ってくる。これが、ベンチャーキャピタルと出資者との関係である。
その3:未上場企業
ベンチャーキャピタルは、成長見込みのある未上場企業に投資を行う。
ベンチャーキャピタルは、未上場企業に投資する前に、企業調査(デューデリジェンス)を行い、その企業の将来性や成長の可能性を判断する。
サービス評価や財務分析だけでなく、起業家自身も判断対象となる。
ベンチャーキャピタルからの投資を受けることで、資金力の乏しい未上場企業は、事業の成長スピードが上がり、事業提携や人材の支援を受けることができる。
また、有名ベンチャーキャピタルからの投資を受けると、話題性もあり、企業のPR*にもつながる。*認知度の低いベンチャー企業にとって大きなメリット
一方で、資金欲しさに深く知らないベンチャーキャピタルからの投資を受け入れると失敗することがある。
ベンチャーキャピタルは少なからず経営に関与してくる*ため、合わないベンチャーキャピタルだと、経営方針にズレが生じて事業の成長スピードが鈍化してしまう。
*この点はベンチャーキャピタルから投資を受けるデメリットにもなりうる
そのため、未上場企業がベンチャーキャピタルから投資を受ける際は、経営方針や考え方が合うベンチャーキャピタルを見つける必要がある。
3.国内190社のベンチャーキャピタルを分類してみた
ベンチャーキャピタルは、ファンドの性質や投資目的などから5つに分けることができる。
*各項目で挙げたベンチャーキャピタルは、エブセレがまとめたベンチャー企業ランキングをもとに抜粋している。
1.独立系ベンチャーキャピタル
どこの組織にも属さない、独立した投資家が設立したベンチャーキャピタル。
金融出身の人や他のベンチャーキャピタルで働いていた人、起業していた人など、ファイナンスや事業戦略といった起業に必要な知識やスキルを持っている人が独立していることも多いため、投資家個人の色が強く、独自の支援を行うところが多い。
独立系ベンチャーキャピタルの中にも、ベンチャー企業を支援する会社にも関わらず投資の意思決定が遅いところも見受けられる。シード・アーリーでの資金調達は一刻を争うため、リード投資としてラウンドに参加するベンチャーキャピタルは慎重に選ぼう。訪ねたベンチャーキャピタルの組織構成や投資決定までの流れやかかる日数など把握しておくと◎。
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2.コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)
事業会社がファンドを組成し、未上場企業に投資を行うベンチャーキャピタル。
コーポレートベンチャーキャピタルが投資をする目的は、自社の経営メリットにつながる協業や事業シナジーのためである。この点で、独立系のベンチャーキャピタル(VC)とは少し異なる。
CVCは、VCほどキャピタルゲインを求めているわけではないが、自社の業績アップや新規市場の開拓など事業面での成果を求めて投資を行うところも多い。
「他社との協業ができない…」「新しくサービスを打ちたいが既存に注力してと言われる…」などビジネスにおいて不利な状況にもなりかねない。
CVCからの調達の話が来ても安易に受けるのではなく、「本当にこのCVCから投資を受けてもいいのか?」を考えよう。
3.金融系ベンチャーキャピタル
銀行や金融機関などが設立したベンチャーキャピタル。
独立系ベンチャーキャピタルと同様、資金運用を主とした目的で投資を行う。
しかし最近では、Fintechといった金融サービスを立ち上げる未上場企業も増えており、事業シナジーや協業と行ったコーポレートベンチャーキャピタル的一面もあわせ持つ。
4.海外系ベンチャーキャピタル
本拠地は海外だが、日本の未上場企業に対して投資を行う目的のもと設立されたベンチャーキャピタル。
海外ファンドでの投資実績が高いベンチャーキャピタルが多く、アクレラレーションプログラムをはじめとした投資以外の支援体制も整っている。
5.政府/大学系ベンチャーキャピタル
政府や公共団体、大学機関によって設立されたベンチャーキャピタル。
大学発ベンチャーをはじめ、技術力の高い中小企業や研究開発ベンチャーといった未上場企業に投資を行う。
国全体でベンチャー業界を盛り上げようという動きがあり、最近では経済産業省が推進するプログラムの一つであるJ-Startupが話題を呼んだ。
4.まとめ
ベンチャーキャピタルは、成長見込みのある未上場企業に投資を行う組織のことである。
投資先の未上場企業が成長し、上場やM&AといったExit(エグジット)を達成することで、
ベンチャーキャピタル自身はもとよりベンチャーキャピタルに投資をしている事業会社や金融機関などに利益が分配される。
そのため、ベンチャーキャピタルは投資先企業の成長を助けるために、投資以外の経営アドバイスや人材支援など支援範囲を広げている。
近年、ベンチャーキャピタルの数は増大し、多様化するベンチャーキャピタルだが、“ある一つの想い”は同じである。
それは、どのベンチャーキャピタルも目先の利益や自己利益ではなく、投資先企業の成長、そして日本社会全体の発展を考えて日々ベンチャーキャピタル業を営んでいる。