







というわけで今回は、そんな社長にも社員にも得をもたらしてくれる「信託型ストックオプション」について詳しく解説をしていきます。
目次
「信託型ストックオプション」とは?

信託型ストックオプションとは、発行当時の低い行使価額で発行したストックオプションを信託にてあらかじめ保存しておき、あとから一斉に、社員の貢献度合いに応じてストックオプションを配布する仕組みです。

例えば、もし仮に皆さんが松下幸之助がいたパナソニック創業当時の株式を保有していて、今その株式を売却するどうなるでしょうか。
創業当時の、まだ成長過程であった低い時価で発行されたパナソニックの株式を、大企業にまで成長した現時点の時価で売却するので、相当なキャピタルゲイン(売却益)を得ることが予想できますね。
つまり、信託型ストックオプションとは、発行された当時の価値のままの株式が長期保存され、会社での頑張りに応じて最後に配布されるため、入社のタイミングや発行のタイミング関係なく、社員全員が多くの利益を得られる仕組みなのです!

信託型ストックオプションは、発行時にストックオプションを社員に割り当てる必要がありません。
また、アーリーステージの早いタイミングで発行するため、行使価額を低く設定でき、株式の希薄化を防止できます。
さらに、まとめて発行するため、何度もストックオプションを発行するための事務作業や管理コストが削減できます。
つまり、信託型ストックオプションによって、発行時という不確実性要素の高い時期のバイネームによる割当のプレッシャーや、優秀な社員を採用する度にストックオプションを発行しなければならない煩雑さから逃れることができるのです!
「信託型ストックオプション」について、社員・社長にとってのメリットをさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
もっと詳しく!「信託型ストックオプション」の仕組み
ここでは、夢のような信託型ストックオプションがどのような仕組みになっているのか、図を用いて簡単に解説していきます。
信託型ストックオプションの仕組みは、4STEPで構成されています。
- 委託者(社長)と受託者(顧問税理など)との間で信託契約を締結する。
委託者は、受託者に対してストックオプション発行に必要な金銭を渡す - 信託契約に基づき信託された金銭を、受託者が発行会社(社長の会社)に払い込み
- 発行会社が受託者にストックオプションを割り当てる
- 受託者が、受益者(社員)にポイントを付与する
(受託者は、発行会社の決めたポイント付与プログラムに従って付与を行う) - 信託期間満了をもって、受託者が受益者にストックオプションを配布する

ただ、ちょっと質問なんだけど、発行会社の社長と委託者の社長って同一人物だよね?


直接発行会社が受託者と信託契約を結んで、受託者に払込分の金額を渡しても良いじゃん!

発行会社が直接受託者に対してストックオプションの払込金額を渡してしまうと、会社資金からの払い込みとなってしまい、会社法にもある仮装払込の禁止事項に該当してしまいます。
そのため、委託者である会社の社長個人からストックオプションの払込金額は渡さなくてはなりません。

委託者が渡した金銭と、受託者が発行会社に払込している金銭の額って全く同じように見えるんだけど、これは単に受託者を介して同額の金銭が委託者から発行会社に回っているだけなの?

信託契約を結んだ後に、委託者から受託者に支払われる金銭には法人税がかかります。
また、受託者に信託の依頼をするので、手続きや運営の各種費用が発生します。
ですので、委託者が支払う金額は、ストックオプションを発行するために必要な費用以外にも法人税と依頼費用が上乗せられた分が受託者に支払われます。

実はいろんなお金が発生しているんだね。
社長も社員もみんながハッピーになる「信託型ストックオプション」のメリット

ここからは、「信託型ストックオプション」のメリットを社員視点・社長視点でそれぞれ解説していきます!
社員からみた「信託型ストックオプション」のメリット
①低い行使価額で発行しているため、得られるキャピタルゲインが大きい
信託型ストックオプションの場合は、会社のステージが早い時期にストックオプションを信託としてまとめて発行し、信託満了までは行使価額が低いタイミングで保管されます。
そのため、最終的に社員に配布された時にストックオプションの権限を行使すると、行使価額に大きな差が生まれ、キャピタルゲインを多く得ることができるというメリットがあります。
従来のストックオプションの場合、ストックオプションの発行時に在籍している社員にのみ配布することのできるものなので、事業が成長し、新たに優秀な社員を採用する度に発行する必要がありました。
そのため、事業拡大とともに時価総額が伸び、株価が上がると、行使価額も高くなってしまい、将来株に転換し売却する時のキャピタルゲインが小さくなるという問題点があったのです。
②発行時にストックオプションを割り当てられるわけではないので、公平な評価を元に配布してもらえる
信託型ストックオプションの場合は、発行時にストックオプションを割り当てられません。
その代わりに、ポイント付与プログラムという社内規程に基づいた評価ルールで、各社員に付与されていきます。
つまり、採用時に不確定な評価の元「えいや!」とストックオプションを割り当てられるのではなく、実際のパフォーマンスや貢献度に基づいて、公平にストックオプションを配布してもらえるというメリットがあります。
従来のストックオプションの場合、発行時に割り当てられるため、創業初期に入社した社員と後から入社した社員との間で、ストックオプション割当の評価に差が生じていました。
社長からみた「信託型ストックオプション」のメリット
①ストックオプション発行時に、バイネームで割り当てる必要がない
信託型ストックオプションの場合、発行時にバイネームで割り当てる必要がありません。
発行した後は、会社の貢献度に応じてポイントを付与していき、そのポイント数に応じて最終的にストックオプションを配布していくという仕組みです。
そのため、「採用のインセンティブとしてストックオプションを付与したいけど、今後の活躍度合いなど不確実性要素が多くて判断しづらい…」とお悩みの社長にとっては、信託型ストックオプションは社員にインセンティブ効果をもたらしつつ、公平に成果に対する報酬を渡すことができるというメリットがあります。
②ストックオプションの行使価額が低い時にまとめて発行するため、株式の希薄化を防止できる
信託型ストックオプションは、行使価額が低い時にまとめて発行されます。
すると、優秀な社員を採用するために行使価額が高くなりつつも都度発行していた時に比べて、ストックオプションの放出量は大幅に減るため、株式の希薄化を防止できるというメリットがあります。
資金調達などで、スタートアップ企業に株主として入っているベンチャーキャピタル(投資家)の中には、ストックオプションの多大な発行による株式の希薄化を懸念している人も多いので、そういった不安を排除することができます。
③ストックオプションの発行手続きや管理コストを削減できる
先ほどもお伝えした通り、信託型ストックオプションは、1回にまとめて発行します。
社長にとって、優秀な社員を採用するためにストックオプションの設計を考えて導入することはもちろん必要ですが、事業拡大や会社経営に注力することも必要です。
何度も発行する必要のある従来のストックオプションと比べても、信託型ストックオプションの場合ですと、発行手続きや管理面でのコストを削減することができるというメリットがあります。

信託型ストックオプションはたった1回ですので、回数を見るだけでもメリットであるのは明白ですね。
ここまで、信託型ストックオプションの仕組みやメリットについて解説してきました。
読んだ方の多くは、「いますぐ信託型ストックオプションをうちの会社にも導入するべきだ!」と思ったのではないでしょうか。
もちろん、信託型ストックオプションは社長にも社員にもお得な仕組みですが、活用には2点注意が必要となります。
一つ目は、信託型ストックオプションを導入するタイミングです。
多くの企業は、信託型ストックオプションを、事業が成長前のアーリーステージの段階にまとめて発行します。
信託型のストックオプションは、比較的安価な行使価額で一定期間保管されるので、社員が入社する時期に関係なく、配布する時に公平にインセンティブ効果をもたらすというメリットがあります。
仮に、事業が拡大して会社の価値が高くなったミドルレイターステージの遅いタイミングで導入してしまうと、行使価額が高くなってしまい、インセンティブ効果が薄れてしまいます。
そのため、信託型ストックオプションの導入には、インセンティブ効果を発揮できる適切なタイミングを見分ける「社長の目利き力」が肝になってきます。
二つ目は、導入コストです。
まだまだ発展途上である「信託型ストックオプション」。
国内には、信託型ストックオプションに精通している企業が少ないため、導入のコストが高額となっております。
また、導入のコストは、会社ではなく委託者である社長個人の資金から捻出されるため、社長個人が多くの資産を保有している必要があります。
そのため、経済的に基盤が弱いスタートアップなどは、信託型ストックオプションを導入するに際しては、導入に必要なコストをきちんと確認する必要があります。
まとめ


使い方にはいくつか注意する点もありますが、タイトルにもありますように会社の社長も社員もみんながハッピーになる新しいストックオプションの仕組みです。
これからさらに多くのスタートアップ企業が導入し、スタートアップで働く多くの社員の方に公平にインセンティブが回ると良いですね♪
